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出口ならあるぞ
「さてさてお前さんの今後じゃが。」
猫博士が切り出しました。
「どうしたい?」
どうすべきかを教えてくれず、逆に尋ねたことに人間はうろたえました。
「どうしたい、といわれても…。」
人間は答えました。
「まず、お話しておかねばならぬこととして、あなたが思う『特別な』ものはもうしばらくここには来ません。」
「うむ、あやつは脚を一本なくしてしもうたが、体自体はもともと丈夫だし、うつしよにいる人間どもに大事にされそうじゃから、けっこう長い間むこうにいるじゃろう。」
犬賢者と猫博士が口々にいました。
人間は残された彼の家族とナナが、うつしよで長く一緒に仲良くやっていけそうな話を聞いて、少しこころが軽くなりました。
「こういう話はここに来た犬や猫はもちろん、人間にもあんまり話しちゃいかんことになってるんじゃぞ。お前さんの身の振り方を考えるにあたって必要な情報じゃから、例外的に教えてやっとるんじゃ。」
猫博士はささやきました。
彼らにはうつしよでの同胞つまり犬や猫たちの様子を探る権限が与えられていますが、それをむやみに話してはいけないことになっているのです。
「あなたの場合、天国に行く資格は十分あります。通常、大事な犬や猫より先に人間のほうが死んだ場合、ここには立ち寄らずそのまま天国に行くのですけどね。そして犬がこちらに来た時に、天国から虹の橋を逆に通って迎えに来ていただくことも可能なのです。」
犬賢者がさらに続けました。
「ここに迷い込んだ人間のための出口ならあるぞ、そこを出て歩いていけばお前さんが行くべきところに行けるんじゃがの。」
猫博士も言いました。
人間は猫博士の指し示した方向を見ました。
たしかに人ひとり通れるサイズのドアがありました。
ただ不思議なことにそこにいる犬や猫にはそのドアが見えてないようです。
「それで、ぼくがそのドアを通って行くべきところに行ったら、ナナとのことはどうなるのでしょう。僕にとってナナは特別な犬ですが、ナナにとって僕が特別な存在かどうかは、正直言って自信がないのですよ。」
ずいぶんと自信のない飼い主もいたもんだ、と、犬賢者は思いました。
「まあ、たしかにナナがこれから先もうつしよにいて、お前さんとの間以上に重要な関係性を構築しないとは言い切れんがな。だったらさっさとその出口から自分のいくべきところへいけばいいのではないか。ナナが再びお前さんに会いたいと思っておれば、天国から逆にこっちに迎えに来ればいい。」
猫博士が言いました。
「でも、それだと、ナナにはずっと会えないままの可能性もある。」
人間が言いました。
「それが嫌なのですね。」
犬賢者が確認しました。
「そういうやつ、以前にもいたな。」
猫博士は記憶をたどり言いました。
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☆作者あとがき☆
もうしばらく会話シーンが続きます。
というより、
物語のほとんどが虹の橋のたもとの草原にいる者たちの
会話で占められているので、
血沸き肉躍るといった盛り上がりには欠けるのです。
虹の橋自体天国に近いところなので、
今はやりの『鬼滅の刃』に出てくるような
悪人(鬼)とかが出てくるわけじゃないですからね。
かつての多くの人気アニメでもそうですが、
悪役考えるのうまいですよね。
自分はそれが苦手かも…。
☆おまけ~頭の中はトリックアンドトリート~☆
マオの現在の頭の中…。
もしかしてちゅ~るでできた見た目ソフトクリームのお菓子か?