そこは地獄の底の底、もう何年責め苦を受けたかわからない。
「これが終わったら俺は再び鬼になるぞ!」
地獄で極卒をやっている鬼たちにもそんな放言を飽きずに繰り返す男。
それはやせぎすで目だけはぎらぎらとしたカマキリのような男だった。
遊郭の最下層で生まれた男は『妓夫太郎』と名乗っていた。
彼の悪行は、閻魔伝の裁判の常識を超えていた。死んですぐこちらに来たなら「二名殺害、しかし、同情の余地もある」という判決になっただろうが、不可思議な力で妹とともに行かされ、そこで重ねた罪状は何千年もの責め苦をもってしてもあがなえないほどになっていた。
そんな妓夫太郎が逆上するのは、同じく地獄に落とされた妹『梅』が責め苦を受けさせられそうになる時である。兄とは似ても似つかぬ美しい容姿をした妹だ。妓夫太郎は針の山を登れと言ったら妹を背負って自分だけが傷つくように計らうし、そして今、血の池地獄に放り込まれると、妹を頭上まで抱えてかばっている。
「風変わりな罪人だ」
極楽の池から地獄を覗き込んでいたお釈迦様が言う。
お釈迦様はある者に銘じて、銀色の蜘蛛の糸をまっすぐ血の池に降ろさせた。
遠い遠い天上から細い銀の糸が下りているのを見つけた兄妹は、これをたどれば上に行けると糸を手繰って昇って行った。一生懸命昇った甲斐あって、あともう少しで頂上にたどりつくところまで来た時、ふと下を見やると他の罪人たちもどんどこ昇ってきている。
こんなにたくさん人がぶら下がれば、細い糸はいずれ切れてしまう、あせった妓夫太郎は、
「早く登れ、梅!」
妹をせかして彼女を上にやろうとした。
妹が兄の言葉に従って上に到着しその糸を見るとそれは切れる直前であった。
「お兄ちゃん!」
妹が叫ぶ。その時、糸を操っていた主がつぶやいた。
「糸の強度はこれが限界だとでも思っているの?」
主は怪しげな術で糸を強化し妓夫太郎が登りきるまで持ちこたえた。その主はかつて鬼として顔を合わせたこともある累であった。
「ようやく登ってきたな。だが、極楽まで来たとしても許されたと思うな。そなたたちの大嫌いな『他人の幸せ』を守るための業務をしてもらう方がよりイヤガラセになると思ったのでな」
兄妹はそれぞれ別々のナントカ天という神のもとに送られそこでこき使われることとなったとさ。
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キメツの鬼版『蜘蛛の糸』いかがでしたでしょうか?
キモは蜘蛛の糸を操る累の活躍と利己的なカンダダとちがって妹だけは逃がそうとしていたので救いの手が差し伸べられたってところでしょうか。
神様の中には守護をつかさどるなんちゃら『天』という存在もいて、そういうところでは戦闘能力のあるものも重宝されますよ(多分)。
う~ん、あんな、残虐なことをした鬼が神の眷属?との疑問は出るでしょうが、実は古い伝承にも鬼が神になった事例はございます。
その代表的なものが『鬼子母神』ですね。
鬼子母神が殺した人間の子は一説によると五百人、もともとインドの武神の妻だったとの伝承もあるので、人間が鬼となったのとはスケールが違うようです。
最後に最近のマオ。

zzz (-。-)y-゜゜゜。
今回は漫画を知っている人でないと楽しめないかもしれない内容ですいません💦。
それではまた(^^♪。