太宰とシラー
『走れメロス』という物語があります。
作者は太宰治。
暴虐な王ディオニスに抗議して死刑を言い渡される。
死ぬ前に十六歳になる妹の結婚式に出たいといい、三日間の猶予をもらう。
その間、友人のセリヌンティスを王のもとに残し、メロスが戻らなければ友人が処刑されることとなる。
結婚式が終わるとメロスは友人を救うために街へ向かうが、途中急流に阻まれたり強盗に襲われたり、いくつもの障害に合い気持ちがくじけそうになる。
しかし、友人が処刑される直前ぎりぎりで駆け込む。
その様子を見ていた暴君ディオニスも「もう一度自分も人を信用してみたい」と、言い改心する。
ストーリは大雑把に言うとこういう感じです。
この作品には原作というか元ネタがあります。
ドイツの詩人で劇作家でもあるシラーです。
正確に言うと「ヨハン・クリストフ・フリードリッヒ・フォン・シラー」です。
名前が長い…。
ベートーベンの第九交響曲『歓喜の歌』の元詩でも有名な方で、この方の書いた『人質』という詩が『走れメロス』の元ネタです。
あらすじはほぼ太宰のメロスと同じです。
違うところと言えばシラーの作品では、どんな障害があろうとメロスは迷いなくひたすら友のところへ急ぐのに対し、太宰の場合は、様々な障害で間に合わないかもという状況になった時、メロス自身「死にたくない」という思いもでてきて、頑張ったけど間に合わなかったんだから仕方ないよね、と、自分に言い訳したり、人間的な弱さや迷いが描かれていることです。
これって作者の個性が出ていますね。
シラーの方はベートベン第九『合唱の歌』の詩を書いている人ですからね。
どこまでも「人間素晴らしい」って理想があるのに対し、太宰治の方はそこまできれいな思いだけではないという表現が見て取れます。『人間失格』を書いた人ですからね。
あと詩と小説というジャンルの違いもあるでしょう。
詩だとさくさくっとメッセージの骨子だけ描かれて、小説だといろいろと肉付けできますからね。
戦国の『走れメロス』
三つ目のメロスは戦国時代の実話です。
一か月ほど前NHK大河ドラマ『どうする家康』で岡崎体育さんが鳥居強右衛門を演じると発表され、歴史ファンは騒然となりました。
それほど知名度のある武将ではありませんが、歴史ファンは、
「あの鳥居強右衛門の話をやるのか!」
と、歓喜\(^o^)/。
戦国版走れメロスとして有名な話だからです。
ざっくり説明いたしますと、武田騎馬軍団を打ち破った長篠の合戦の前の話です。
(この先ネタバレ)
徳川と武田に挟まれた地を治めていた奥平家。
昔は武田に臣従していたけど勝頼の代になってから徳川の方に臣従し、家康の長女亀姫を娶っていた。
その状況下、奥平家の長篠城を武田の軍に包囲され奥平氏は籠城戦を強いられるが、徳川織田の援軍がなかなか来ない。
そこで鳥居強右衛門が武田の包囲網を突破し、徳川の陣に駆け込み援軍を要請する。
事情を聞いた家康があと二日ほどすれば援軍を到着させることができると言い、それを聞いた鳥居は、一刻も早くその旨を城にこもっている仲間たちに伝えたいと、軍と一緒に行けばいいからゆっくり休みなさいという家康の申し出をけって、長篠城に急ぐ。
しかし途中武田の軍に捕まり、援軍は来ないと城内の仲間に言え、と、恩賞をちらつかせながら誘いを受ける。
鳥居は武田方が示した好条件に乗ったふりをして、武田の軍に囲まれながら長篠城前に連れていかれる。そして
「徳川織田の四万の兵隊が来る、あと二日の辛抱じゃ!」
と、大声で叫び、騙された武田軍は鳥居を磔にかけて殺した。
歴史的には鉄砲を使った戦術で無敵の武田騎馬軍団を破ったことの方が有名で重要です。
大河ドラマという長丁場で、どのエピソードを描き、あるいは描かず省くのか、それはテレビ局と脚本家の胸先三寸と言ったところですが、いい話なのに今まであまり描かれては来なかったのですね。
☆本日の癒し~猫も走れ~☆
ブログ主の顔を見たらまっしぐらに走ってくる猫。
かわいすぎです(。・ω・。)ノ♡。
それではまた(^^♪。