そこはこの世のどこにもなく
時間や空間、そして次元のしばりすらも存在しない特殊な空間。
そこで猫族の未来について話し合う「にゃんにゃん緊急集会」が開かれる。
今回初めて集会に参加するマオは緊張していた。
定例集会、通称「にゃん集会」ならこれまで何回も開かれ、
猫族のお偉いさん方が話し合うことは行われていたが、
自分のような一般ニャンまで参加を許された大がかかりな集会というのは
少なくともマオ自身が生まれてからは初めてのことである。
にんげん界ではC国で発生した新型ウイルスで引き起こされる
病のせいでしっちゃかめっちゃかになっていた。
その発生源であるC国では病の感染源のぬれぎぬを
人間とともに暮らす犬や猫がきせられ大量にサツ害されたのだ。
過去にユーロシナ大陸の西側で、猫族とくに黒猫が
悪魔の使いなどといわれて大量ギャクサツされたことがあり、
今回あの忌まわしい過去が再現されるのでは?との危機意識を
上層部のみならず末端のものまで共有したので
対策を講ずるために今回の緊急集会と相成ったのである。
出席にゃんリスト 1ページ目
はじめての議会出席にマオは緊張していた。
猫はめったに水を欲しがることはないのだが、
この時ばかりは喉が渇いた感じがしていた。
(水はどこにゃ?)
マオは周囲を見回した、しかし水分を補給できるところはどこにもない。
「初めての方ですか?」
真っ白なオス猫が声をかけた、マオは黙ってうなずいた。
「水が飲めるところはありませんが、
ほら、あそこにちゅ~るが置いてあるでしょう。
あれで水分を補給するといいですよ。参加者への無料サービスです。」
ちゅ~るの無料サービスがあるとは運営側もずいぶんと太っ腹だ。
猫という生き物は、自分の縄張り内が脅かされない限り、
他の存在や世間のことはどうでもいいと考えるようなことがあるので、
猫全体の福祉を考える目的でなされている集会でも
このように「お愉しみ」の要素がないと参加者を募ることができないのだ。
白猫は続けた。
「大サービスですね、いつもの集会だと一匹につき一本ずつ、
味もマグロとカツオの二種類しかないというのに、
今回は一匹につき三本までOKで、しかも味のバラエティもすごい(*^▽^*)!
でもお持ち帰りはできませんから、ここで食べきるのが条件ですけどね。」
話から察するにこの白猫は「にゃん集会」の常連らしい。
彼についていけば間違いはないだろうとマオは思い、
一緒に置かれているちゅ~るを物色した。
「わたしはいつもカツオ味のほうを選ぶのですが、今回はどうしようかな?」
選択肢というのは多ければいいというものでもないようで、
けっこうな時間をかけて三種類のちゅ~るを二匹の猫はそれぞれ選んだ。
席は指定ではなく自由なので適当なところを選んで彼らは座った。
「申し遅れましたが、私はTと申します。」
白猫は自己紹介をした。
(作注ー個人いや個猫のプライバシー保護のため名はイニシャルで表しております)
「こう見えても私ってかなり有名なのですよ。
家に帰ってあなたの下僕にきいたら『ああ、知ってる!』って
おそらくいうと思いますね。」
Tと名乗った白猫は続けた。
猫という生き物は基本うそはつかない、うそというのは他者を意識し、
何かをごまかしたり、自分を大きく見せようとしたりする時につくものであり、
もともと他者を気にせず自分は自分という気性を持つ猫には
うそをつくという発想がないのだ、だから、
Tがそういうのなら実際かなり有名な猫なのだろう。
ついでにいうと他者を気にしないのが猫なのでそれを聞いたマオが、
「わあ、有名猫と知り合っちゃった,すげ~!ラッキー\(^o^)/!」
などと思うこともなかった。
ただ、何となく馬(猫だけど)の合う者同士、
つれだって隣り合わせにいるだけである。
マオとしてはこういう場に慣れているらしいTと一緒にいることで、
不安が払しょくされてきた。
そしてちゅ~るを手にもって開始まで時間をつぶしていたが、
そのさまは人間がアイスを手にもってなめているかのようにも見えた。
やがて「議長」なる猫が彼らが集う場所の中央へと進み入り、
「にゃんにゃん緊急集会」の開始がアナウンスされた。
次回に続く👇
作者あとがき(*^▽^*)。
まずお断りしておきますがこのストーリーはフィクションであり、
実在の人物及びにゃん物、そして団体などには一切関係ございません。
フィクションやったんか~い(; ・`д・´)⁉