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「名前にいろんな種類があるのはわかった、でも、それに何の意味があるのですか?弟たちだけじゃなく、ぼくの頭の中もぐちゃぐちゃですよ。」 保護者のような顔をしていた黒の長毛猫がいいました。 子猫たちの兄だったのか、と、タダヒトは思いました。 「まあ、ふだん相手を呼んだりする分にはどっちであろうと大した意味はないな。」 猫博士は答えました。 「言いたいのは、うつしよで通用していた人間の名と、我ら犬や猫の名が 、ここにおいては大きく意味が違うということなんじゃ。」 謎かけのような猫博士の言い方にタダヒトも首をかしげました。 猫博士は続けます。 「タダヒトはここに来て、うつしよで使っていた自分の”名前”を名のる気は起きなかった、それをわしは、ここはそういう場所、といった。つまり、わしらにとっては人間同士で通用している人間の名などに意味はないからじゃ。薔薇の花を別の名前で呼んでも甘く香るように、”特別な人間”は何と呼ばれようと、ここにいる者にとっては”特別な人間”なのじゃ。」 たしかに犬たちが飼い主を他の人間と区別するのは、外見や人間同士で呼ぶ名ではないな、と、タダヒトは思いました。 「逆にここにきた犬や猫の名じゃが、それぞれの名につけてくれた”特別な人間”の痕跡がある。」 「うそだ!」 この言葉を聞いてラテは叫びました。 「人間はみんな怖い!僕に”特別な人間”なんていない!でも僕には名前がある!」 ラテの言葉に猫博士は頭を掻きました。 「お前さんの”人間怖い”には誤解も多分に交じっておるのじゃがの。猫の中には名すらもらえず生きてきた連中も大勢いる、それに比べるとお前さんは、人間がくれたえさを食べて暮らしていたじゃろう。」 「うっ⁉」 「お前さんたちについている名は、他の猫とお前さんを区別するためにあるんじゃ。そもそも物の名というのは、そのものとそれ以外のものとを切り分ける役目がある。他のどの猫でもない、犬でもない、縁を結ぶため人間は我々犬や猫に名を与えるのじゃ。」 猫博士は続けました。 「ペペ君たちにもかわいがろうとしてくれた人がいるってことですね。」 タダヒトは言いました。 「その縁がつながる前にこやつらはこっちの世界に来てしまったからの。」 「違うもん!人間怖いだけだもん!」 ラテは抵抗しました。 「やかましくなってきたから今回はここまでじゃの。」 猫博士がお開きを宣言しました。 人間が与えてくれた愛情の残滓はあるが、それを実感せず生涯を終えた子猫。 「さてさて、こやつのたましいの行く末は?」 どうなるのか?猫博士も見当はつかないようでした。 次回は3部に突入です。👇 ラテ君の「人間怖い」の感情はなかなか手ごわいようです。 ところで猫博士の話の中に出てきた ”薔薇の花は別の名で呼んでも甘く香る”のフレーズですが、 翻訳者によって若干の違いがありますが実はこれは、 シェイクスピアの有名な悲劇『ロミオとジュリエット』の中の 有名なバルコニーのシーンでジュリエットが 「ロミオ、あなたはどうしてロミオなの。」 と、つぶやいているあとに続くセリフの一部なのです。 猫博士はさりげなく人間界で有名なフレーズを いれるのがお好きなようで。 たまにはこんな華やかな縁取りもいいよね。 だって女の子だもん、って、それは別のアニメ💦 ではまた(^^♪。
薔薇はどんな名で呼ばれようと
☆作者あとがき☆
☆おまけ~薔薇は♪薔薇は♪薔薇は~♪~☆