前回の話はこちら👇
猫はつぶやき犬は説明する
彼らから離れた猫博士はまだぶつぶつ言っています。
善意、穏便な言葉でごまかしたがる犬賢者ならそういうじゃろうて!
しかしわしに言わせれば、自分が経験したことない痛みを理解できない想像力の欠如であり、鈍さじゃ!
こんなのがわんさかいるから、人間というやつは順繰りでいじめられる弱い立場に立たされる経験をするべきだ、と、大いなる存在から判断されて実際そうなっちまうんじゃ!
いじめられた人間は、それをやった相手には返せないためにより弱いものにはけ口を求める、強い側の言い分は「愛」だの「しつけ」だの「しごき」だの「いじり」だのと、善意であるかのようにカモフラージュされ、やられる側にうけいれることを強要する。
社会で強い立場なら部下に、クラスで強い立場ならそうでない者に、家庭で強い立場ならより弱い子供や配偶者に。
人間だけで済むならそれも勝手にすればいいが、人間の中にはけ口が求められない連中にわしらの種族をいたぶるのがいるんじゃろうが!
人間にいたぶられ、うつしみを失った者たちのすべてがすんなりここへ帰ってこれると思っているのか!
中にはその苦痛とショックでなかなかここまでたどり着けんものもおるんじゃ!
人間の子なら案内役もいるが、猫は虹の橋担当のすべての猫の手を借りても足りんくらい多すぎて、口惜しいが自力でたどり着いてくれることを祈るだけなのじゃ!
「あなたはやさしいひとだから、鬼にだってそうなった経緯や事情があったのではなんて考えてしまうのでしょう。」
猫博士が去った後呆然としているタダヒトに犬賢者が言いました。
「でもね、いじめる側に向ける慈悲ならここは管轄外です。ここにやってこれる人間は、うつしよで私たちと縁を結んだ者と、いじめられても自分はいじめない選択をしたものだけです。自分が強い体場に立つ前に虐待死させられた幼子ならともかく、いたぶる相手を探そうと思えば探せるだけの強さを持てる年齢になっても、そうはならないでいることの難しさを、あなたはわかっているのでしょうか?」
「いや、もちろん、悪い子ではないと…。」
「悪い子ではない?あなたの"普通"はしょせんそこまでですか?人間はいつもそう、いじめた側の言い訳を周囲の者もめんどくさいからと受け入れて、いじめられる側にもそれを受け入れるよう暗に圧力をかける、そんなことの繰り返し。それに負けた人間はかつて自分が受けたいじめを”まっとうな行為”と解釈して、さらに弱いものに同様のことを繰り返す、そんな人間のルーティーンをこの空間は拒絶します。なぜならそれは、我々動物を虐待する人間の心性と同じ根っこでつながっているからです。」
犬賢者はぽんぽんとタダヒトの体を叩きました。
「なぜ我々が彼女に話しかけなかったかわかりますか?私たちが話しかければあなたも話しかけていいと思うでしょう。あなたの無邪気な善意の言葉で、少しづつだが治癒され続ける彼女の魂を破壊されてはたまりませんから。」
猫たちは病気の感染源だと勘違いし、
人間は想像力欠如の思いやりからクソバイスを試みる、
心を痛めつけられて帰ってきた者に
この場所は無慈悲であってはならないのだが…。
☆作者あとがき☆
1,2部は8回で済んだのにこちらはまだ終わらない、
もともとあの世へ旅立ったワンニャンや人間の話なので、
暗いエピソードも多い話ですが、
中でもこの章はネガティブな表現が多い…。
ポジティブな事柄は、やった~\(^o^)/!とか、いいね(^^)v、とか
ワンフレーズでも伝わるし摩擦も生じないが、
ネガティブなことを語るにおいてはそれだけじゃやりにくい、
このフレーズ(表現)を省くと誤解を招くかな?
と、危惧し、この物語に限らず
ついつい文字数が多くなってしまいます。
猫博士と犬賢者の言っていることも
表現や態度が違うだけでほぼ同じことですけどね( ̄▽ ̄;)。
☆おまけ~犬と猫~☆