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名前が付いたけど…
愛犬がやってくる日まで虹の橋のたもとに滞在することにした人間は、他の犬たちにとってもいい遊び相手でした。
普段ここにやってくる人間はお目当ての子に再会すると、すぐ去ってしまうので、久々に長い間滞在してくれる人間に犬たちも大興奮です。
アピールしてくるのは比較的積極的な犬たちです。
「タダヒト、ボール投げて!」
「タダヒト、抱っこ!」
人間のことに猫だって無関心でいるわけではありません。
人間を囲んでいる犬たちを出し抜いて、彼の懐に飛び込んでいく「度胸試し」のような遊びが流行りました。
「ふん。」
人間きらいのラテはそれを冷ややかな目でみていました。
しかしペペは違いました。
ダッシュで近づくとその小さな体を生かし、人間の周りに群がっている犬たちの背中を踏み台にしてジャンプし、彼の胸元に飛びつきました。
「なんてかわいい!」
飛び込んできた小さな白い子猫には犬派だった彼も相好をくずしました。
「やるじゃん!」
「おまえ、すごいな!」
見ていた猫たちも小さな体を活かしたペペの頭脳プレーに感心しました。
ペペがすっかりご満悦になってラテのところに戻ってくると、
「お前何やってんだ!」
ペペは逆にどなりました。
「何って”度胸試し”だよ。ラテは僕よりさらに小さいんだからもっとうまくやれるんじゃないの?やってみたら?」
「やるか!それに小さい言うな!」
「おやおや、白チビたちが賑やかじゃの。」
ラテとペペの様子を横目に見ながら猫博士が人間に近づきながらいいました。
「あの、気になることがあるのですが、ここの犬たちはどうして僕を”タダヒトと呼んでいるのですか?」
人間が猫博士にたずねました。
「ああ、わしが名付けた。ここにしばらくいるのなら名前がないと不便だからの。」
「えっ?」
「人間を待ち続ける犬を”忠犬”と呼ぶ、だったら犬を待ち続ける人間は”忠人”じゃな。お前さんたちの国の漢字にはいろんな読み方があって、これを人の名前風にアレンジすると”タダヒト”。どうじゃ、わし物知りじゃろう。」
「…。」
無言になる人間、そこに犬賢者も口をはさみ
「まあまあ、ここは猫博士の顔を立てて…。」
なだめとりなしました。
タダヒトってなんか「ただの人」って感じがなあ。
と、人間は頭をかきながら、
「それなら最初に名前を聞いてくれれば。」
と、言いました。
「だって、お前さん、名のらんかったじゃないか。」
「いや、確かにそうだけど…、でも普通聞きませんか?」
「お前さんがここでうつしよでの名を名のらんかったことが全てじゃよ。」
名のらなかったら好きにあだ名をつけていいのか?
確かにあだ名とは呼ぶ方が勝手につけたりするものだが…。
「ここに来た時、お前さんが名のらんかったのは名のる気が起きなかったからじゃろ、ここはそういうところじゃ。」
何やら禅問答のような要領を得ない猫博士の答えに、人間、いやタダヒトはさらに首をかしげました。
次回の話はこちら👇
☆作者あとがき☆
人間さんにお名前がつきましたがセンスがいまいち💦…。
そんなこと猫博士には言えません。
そして猫博士は教えたがり屋さんなので、
名前にまつわる話がもう少し続きます。
☆おまけ~海の中をたゆたって~☆
家にいながらなぜか溺れかけているマオ(;゚Д゚)!